職人の話し

我々の現場は、多くの職人さんと一緒に仕事をします。
暑い日の炎天下、寒い冬の寒風の中、雨や雪でも仕事を着々と進めてくれる職人さんのお陰で完成に漕ぎ着けます。

長い付き合いで、息子さんが跡継ぎとなっているケースもありますが、父親の姿を見て憧れの職業とは思われないのか、なかなか跡取りの居ないのが現状です。

職人さんの高齢化とそれに伴う減少が、これからますます大きな問題となって来ます。
我々がお付き合いしている職人さんは、酒をよく飲みます。
皆一往に酒に強い。そして楽しい“酒”です。
重労働を終えて帰って、最大の楽しみになっているのでしょう。

労災事故率と死亡率の最も高い職業“土木・建設業”。
ベテランの職人の貴重な戦力であっても、いつまでも「危険・キツイ・汚い」と言われる3K業種の現場ではたらいて貰う訳にはいきません。
しかし、一般に建設労働者である職人さんの寿命は短い様に感じます。
格闘技の選手の寿命も短い様に思うことがありますが、重労働である職人さんも短命な方が多いのが現実です。
人の一生に使えるエネルギーは一定で、職人さんや格闘家は、一般 の人より早く燃焼してしまうのでしょうか?

そんな努力や職人気質に我々の現場は支えられています。
子供達は、肉体を使わず休みも多く有って稼げる仕事を選ぶはずです。
見習い期間は、賃金も安く、ベテランになったところではたして毎日上手く仕事が回ってくるとは限りません。
自分で道具を揃え、車を買い、ガソリン代や社会保険料等を個人で負担し遣っていると、なるほど決して実入り良い職業ではありません。定年が無いことぐらいが長所といえるかもしれませんが・・・。

そこまで言ってしまうと、何でこんな仕事やってんねんと言うことになります。それはやはり職人気質です。色々な職人と一緒になって作り上げる達成感です。
そこにはもの造りをする楽しさがあるから、やれるのです。
自分の技量を現場で生かし妥協しない職人気質があって良い仕事になります。建築の仕事は、そんな職人さんがいて成り立っています。
どんな近代的なビルを設計の先生が、デザインしてもそこに飛び乗ってくれる鳶職の人が居なければ、絶対建ちません。

でもこの頃「良い仕事がしたい」と職人さんがよく言います。
新建材等の陰で、良い仕事に巡り合う機会が減り腕を振るうチャンスも減っているのです。

2005.6.11