『受 注』を頂く話

仕事は、誰から貰えるか?

友人や知人は有力な候補ではありますが、絶対ではありません。
友人や知人だって社会活動をしていれば、色々な人間関係や利害関係が在ります。
何を優先すべきかは、その相手との経済活動の嵩によって左右されても当然です。

仕事は、誰から貰えるか? 一言で言って不思議な“ご縁”としか言い様がありません。

我々の仕事の単価は、小さくありません。
新築であれば、購入価格は何千万であったり場合によれば何億にもなります。
そんな仕事を多くの工務店の中からお客様が我々を選ばれるのです。
その基準とは何なのでしょう?
その会社の経験・実績・会社の歴史・建物に対する考え方・社是、理念・コスト(価格)・デザイン力や計画力・人材や資格者の数や特許件数等々が挙げられるでしょう。
でもやっぱり最後の決め手は、我々とお客様の“イキ”が合う事です。人間関係・信頼関係が確立する事です。

職場であっても、住まいであっても人生の大半を過ごす生活の場作りを託すのです。信頼関係が無ければ頼めないと思います。
建築屋という仕事は、そんな重責を担う仕事です。

我々にはイタズラニ経験があります。
お客様には過度な希望があります。
我々には失敗した体験があります。
お客様は、他にない、よそに無い冒険を望まれます。
一生に一度の大きな買い物であれば、その気持ちを大切に我々も心得なければなりませんが、歩み寄る互いの譲歩と妥協が食い違って、真剣勝負ですから関係が険悪に成る時だってあります。

その時、本気になって議論出来るかが、鍵になります。

自分達の都合ではなく、お客様の立場に立った意見であれば堂々と主張すべきです。
“脳力開発”を提唱された故城野 宏先生が、短所は目立つ小数部分、長所の側を伸ばせと言っています。
長所の側に重点を置けば、どんな議論でも目標が(良い建物を建てたい、良い家が欲しいと)共通 であれば、必ず妥協点が見つかるものです。
妥協は、敗北ではありません。
一致点を見出して、遣るべき事を互いにまとめることです。
目的・目標を達成するための方法は、数多くあります。
その中から最善・最良の手法を手探りで探す作業の繰り返しです。

家作りは、条件が全く同じはありません。
前面道路が広かったり狭かったり、隣との空きがほとんど無かったり、南向きの土地・北向きの土地・地盤の悪い土地、敷地が傾斜地であったり竹林や落葉樹に囲まれた土地であったり川や池や海に面 していたり、平面の形状の違い、敷地条件だけでも何かとある上、家族構成(若年者や高齢者の在る無し等)に趣味などによっても左右される条件があります。

施工に要する時間も結構長期間に亘るのが通常ですが、違う条件に対応した計画に時間を取ることが重要になってきます。
建築屋さんなら変幻自在に対応して貰える物と思われている様ですが、この所の細かな聞き取りで間取りや、共用スペースの取り方や収納や段差や窓の位 置や屋根の形に大きく係わって行きます。

計画の時間と調査の時間を十分に使うという言う当たり前のことが、建築を成功させることの大きなポイントになります。

2006.3.3