日本の住宅事情

我々の活動している地域山田は、千里ニュータウン・千里万博と国家的プロジェクトが行われた関係で、過去に大規模な土地買収がありそれに伴って、平均的住宅と比較して高額と言える住宅を建てる機会に恵まれました。
今でも30年以上前にたてさせて頂いた家で立派な家が数多く残っています。

“家”と言うのは本来、少なくとも二世代や三世代に亘って使われて当然です。
海外の住宅事情では、決して珍しい話ではありません。

日本の住宅は、ローンで建てられる事が多い様に思われます。
誤解されることを覚悟で申し上げるとローンで建てられた方は、ローン返済に追われるためにその後の家に対する手当てが疎かになっている様に思います。

家は、定期的に手を加えて行くと、やはり長持ちする物です。
手元に有るお金で建てられた家は、勿論その所有者の使い方と意識によっても異なり一概には言えませんが、今でも良い状態で残っている家が沢山あり、今でも入らせてもらって「いいお家だな」と思うことが良くあります。

古いお家は、居心地がよく、何となく落ち着く、そんな経験はないでしょうか。
あまり手入れされていない古家は、再生するにも限界がありますが定期的に手が加えられて来たお家には良い状態のものが沢山あります。

日本の住宅事情は、分譲マンションも賃貸マンションも一般 住宅もローンつまり借金をして建てられるケースが多いため、借金の返済に追われ、返済が終わる頃にどうしようにもなくなってから手がつけられるケースが多い様に見受けられます。
だから結局、その時に出すお金と耐用年数(残存年数)を考えて結果 、建て替えられてしまう様に思います。

“家”は、何代にも亘って受け継がれて行けば、今の日本の建設業界の出す産業廃棄物の量 は、大幅に減らせるでしょう。
ハウスメーカーさんが、デザインの先進性や設備そして耐震性の特長を売りに次から次へと建て替えを勧めて行きます。そのデザインや設備は、100年後は、どうなっているのでしょうか?
施主さんも生きてないし、営業している本人も生きていない、そんな先のことどうでもいいやと言ってしまえば、それまでです。

杉本 賢司さんの書かれた「千年住宅を建てる」を読みますと、世界中には、何百年あるいは千年以上経つ建物が存在しているのに近世になって“建築家”や“一級建築士”などと言う人たちが係わった建物でそれほど長持ちした建物や今からでも残せる建物がどれ程あるのかと調べてみたら情けなくなったと書かれています。

高度に設計され構造計算され最新の材料を使われながら長持ちしない現代建築。過去に職人さんが勘と経験で建てた建物の方が長持ちしているのはナゼなのか?
生活環境が変わったとか気象条件が変わったと言うのは多少あるでしょう。
室内は、エアコンを使うようになりましたし、内と外との温度差が激しい。酸性雨が降る。車の沢山通 る排気ガスの多い道路に面している等々。
でも古い建物が同じ町に存在していれば、条件は同じです。

ここに建築屋が本当の意味で襟を正して取り組みを始めなければならない課題があります。

2006.3.6