顧問の入院

我が社は、小さな会社なので顧問料は払えていませんが、経営の指導を頂いている先生がいる。
お付き合いは、私が前職の会社の主任で先生が大手ゼネコンの専務取締役大阪支店長であった20数年前に遡る。
仕事の打ち合わせで、前社のトップのカバン持ちで一緒に伺っていたのがお付き合いの始まりです。

その後先生がゼネコン退職の後、私の居た前社が顧問として迎え、長いこと何かに付けご相談させて頂きました。私が30歳台で先生が60歳前頃です。

今や互いに50歳台・80歳台となってしまいました。
先生は技術系出身で私が経理畑出身であったことも、今日まで付き合いの続いた要因かもしれません。

経営上の相談に伺う場合というのは、大体においてトラブルが発生した時です。
弁護士や税理士の先生は、事前の相談が普通です。会社の顧客との問題は、長期に亘る工事期間中の近隣問題であったり、受注の競合の問題であったり、技術・品質の問題であったりと様々です。
その度に経験の厚みに助けられ、的確なアドバイスを頂戴してきました。

私は、技術屋ではないので技術が分からないと言うと、「文化が分からないと建築家にはなれない、本当はねっ、工学部建築学科ではなく文学部建築学科の方がいいくらいだ!」「建築は間口が広い、雑学が無いと出来ないよ」と励まされたものです。

「君は子供の頃、信号や横断歩道の無い国道を渡ったことがあるか」
「私の子供の頃はそうやって友達の家に遊びに行っていました」と答えると
「信号や横断歩道・歩道橋を作って安全な町作りをする。すればするほど事故が起こるんや。ナゼだと思う」
「安全は、人間の本能を殺す。動物の本能は常に危険を感じること、それを失わせる結果 となる」
「赤信号で車は確実に止まると思わしてはあかんのや、運転するものも青信号だから人は飛び出しては来ないと思い込んでたらあかん。“まさか”対策を何時も頭に置いて教育せんとな」
「仕事の相手は他人や、こちら側に立った身内意識を持ってもらえるまでは、絶対に油断したらあかん」
「ましてや、お客様を“敵”に回したらこの現場は“負け”やね!赤字や!」
「“三日段取りやで”職人さんとその日になってその日の段取りを組ましたらあかん!明日そして明後日の予定まで話して予定してもらうんや」
「そしたら今日に済まさなあかんとこまで作業は進むし、職人さんの都合も予定も組めるんや、こちらの都合ではなく、相手の立場に立ってやらんと職人は動かんで、その場しのぎが一番あかん」

我が社でも、“まさか対策”と“三日段取り”の言葉は、脈々と生きています。
それを教えてもらった先生が、1月4日から入院された。
考える習慣のある方なので、歳よりは若く思っていたが、大正生まれの、やはり高齢である。

私の大事な話し相手であり、相談相手である。 心から快癒を願っています。

2006.9.02