上海事情2

「先進国に追付け追い越せだけが、国民の幸せに繋がるのか?」

上海では、デジタルカメラで沢山の写真を撮ってきました。
写真による報告が分かり易いのは承知の上で文章による上海の印象をさらに綴ってみます。

中国へ行きますと一番に感じるのは、その歴史と文化の深さです。
この文化のレベルの高さと壮大さは、時の権力者の当時の力を今も感じさせます。

上海から西へ100Kmの蘇州は、美しい水郷の町です。
この人工の川は、北京まで繋がっているということでその総距離は1000Km以上に及び、6000Km以上在ると言われている万里の長城と並んで中国の土木技術の代表的な歴史的遺産です。
町の歴史も春秋時代に遡るということで、紀元前700年以上前には呉の都があった町です。

この国は、この歴史的な町並みと空間を保存していくだけでも世界から尊敬され羨ましがられる素材を持っています。
13億の民が仮に今より均一に1,000円づつ余分にエネルギーを消費する様になりますと、この国のエネルギー消費は1兆3,000億増えます。1万円増えれば13兆円増えます。
消費という観点だけで考えるならば13億の民が居ることは、それだけ所得が増えればそのボリュームで購買力が増加します。
しかし、ことエネルギーに限って言うならば、それは使用する車やエアコン等の急速増加により使用するエネルギーも一緒に、地球の許容範囲に関係なく加速度的に増える事になります。

アルビン・トフラー著『富の未来』にこんな記述があります
「その昔、社会がそれほど変化しなかったころ、老人が尊敬されていたのは、過去を知っていたからだといわれることが多いが、そうではない。未来を知っていたからである。未来は過去とほとんど変わらなかったのだ。」

町の変貌振りを年寄り達は、どう見ているのでしょうか?輝くイルミネーション、高速エレベーター、快適な空調設備、清潔なトイレどれもまぶしいばかりで驚きのはずです。

町が将来を担う若者達の為に形成されて行く事は、構わないとして、その中心となっている超高層の建物の寿命は、現在150年と予測されています。
つまり現在建てられているないしは、建っている高層ビル群は150年先には一斉に建て替えとなるのです。
それは、大量消費の西洋社会の思う壺の様な気がします。

中国の過去の権力者達の都市計画は、1000年先を見越した街づくりが基本姿勢にあった様に思われます。
西洋の近世の大量消費型に歩調を合わせた町づくりは、現実には今生きている我々は、100年先には誰も居ないということを前提に考え、そんな先のことどうでもよいと言うのと同じです。
過去を知っている老人は尊敬されるべき意見を出すべきでしょう!

これからの未来は、過去とは全く違ったものになるのでしょうか?
今後人間の遣ることが、過去とは全く違う起死回生の方法であるとは思われません。それでも、過去の資産(世界遺産等)を守りながらきっと悠久の国中国らしい町づくりが在るはずです。
経済立国を希求するか?国民の平均的な幸せを希求する国づくりをするか?この単純な二者択一の選択の仕方で、この国の未来が見える様な気がするのです。

2006.12.12