条 件

年末にお客様の葬儀に何件か続けて参列させて頂きました。
場所は自宅であったり、お寺や葬儀会館であったりと様々でした。

自宅で葬儀をされたお客様から「葬式で身内を送り出す時は、慣れ親しんだ自宅から出してやりたいと思って」と言われました。
最近は、会館での葬儀が、全般には多くなったと思います。場所的にも都合よく出来ていますし、葬儀を出される身内の方にとっても肉体的負担が自宅よりは掛かりません。

私も、2年前に満89歳の父を送りましたが、その時は父が鹿児島出身ということもあり遠方の親戚 に連絡をとり来てもらったり、お別れをしてもらうのに少し時間を掛けて段取りをするのに公益社に頼んで“エンバーミング”と言う処置をしてもらいました。
これは、動脈より衛生保全液を注入し、静脈より血液を排出し、通 常のドライアイスを使う遺体保全処置が不要になる遣り方です。アメリカやカナダでは95%行われていると言うことでした。

日本人には、遺体に手を付けることに多少躊躇する所があると思いますが、遺体を預けて半日して自宅に帰ってきた父は、布団に寝かせますと全く普通 に寝ている様な様子に見え、孫達が「おじいちゃん、おじいちゃん」と言って順番に添え寝するぐらいでした。

我々は、何時かこの世からどんな形であれ、あの世へ送られて行きます。
建築屋から見ますと、その時自宅から無事送り出してもらえるか少し気に掛かります。
マンションであれば、救急車のストレッチャーが入る様なエレベーターでなければ、棺桶は運び出せません。多少斜めにするくらいであれば大丈夫ですが、ご遺体は立てて乗せる訳にはいきません。
長い階段を4人ぐらいで下りるのに通りやすく運びやすいかも問題です。

住まいは、生きて生活する場所ですから死んだ時の事はどうでもいいとお考えでしょうか?
だから会館での葬儀を段取りする人が多いのでしょうか?
この頃は、病院で死ぬのがほとんどですが、病院から家には戻らず直接会館の棺桶に直行すればいいのでしょうか?
そうではないはずです。やはり一旦は自宅に戻るでしょう。狭い場所であれば担荷でも使って運び込まれる事になると思います。場合によっては、担いだり負ぶさったりして運んでも構いませんが・・・

生前中に墓の準備をしたり、互助会に入って葬儀の積み立てをしたりはしていても、一旦自宅に帰った時の“条件”は、どうにかしてもらえるだろうと考えているのが普通 のようです。生きている間に死ぬ準備をするお話は縁起でもない話だけに、やはり具体的になればなるほどお勧めするのが難しい様に感じます。

でも条件を整えておくことは、難しい話ではありません。つまり、自宅から外へ或いは自宅から地上へ棺桶があまり苦労なく運び出せるかを確認すればいいのです。

遺体が棺桶の中であっちいったりこっちいったりしない様に、そして運び出す人に重い負担をなるべくさせない様に!

我々の終の住み処は、誰が何と言おうが結局は棺桶なのですから、それが通 る道を確保することは、特に高齢化社会では、益々差し迫った条件ではないでしょうか。

2007.1.9