ある会合で、久しぶりに会った知人から「定年も近くなったので、毎年新しい事を一つづつ増やしてる」と聞きました。
どういうことか言うと、フルマラソンに参加したり、大型バイクに乗るため二輪免許を取得したり、山登りを始めてみたりしているそうです。
私も山登りはしますので、この事だけでも楽しむために、足腰の鍛錬と体力の維持が結構大変なのが判ります。
「定年になった時に健康でいるかどうか分からないので元気なうちにやりはじめた」と言うのです。
毎年、趣味を一つづつ増やすというのを聞きながら、我々の仕事は一生掛かっても究められない一つのことを一生掛けて取り組む、あほみたいな稼業やな!と思わず思いました。
死ぬまで同じ事遣って結局、一人前になれない仕事。
「一生勉強」の仕事。
建築屋て、因果な商売だと思います。ゴールが、見えないのはしんどいかもしれません。
地震が来ても、台風が来ても壊れない建物。
お客様の要望は、便利でしかも冬暖かく、夏涼しく、健康的な素材で組み立てられた家。
課題は、単純で簡単でも実際に作ることが難しいのが建築の仕事です。
その上現在は、エコです。
便利で日常の光熱費は安く。
使う機器は丈夫。
メンテナンスは、最小。
勿論、投資金額は最小で最大の効果が必要です。
住宅メーカーが、テレビコマーシャルを頻繁に流します。有名タレントを使って!各地にモデルハウスを建てています。
立派なチラシに、立派なカタログ。
あのお金は、いったい誰から出ているのでしょうか?
私が建築屋に入った時、経営者から言われたことがありました。
「お客様を誘って飲み食いして、それ誰から貰うねん」
「会社にある金は、お客様から貰った金や」
「接待するより仕事でお客様にサービスする方がよっぽど喜ばれるのとちゃうか?」
以前、大手ゼネコンとJVで仕事をした時、現場経費の中に業者とのゴルフ代や社内交際費が会議費名目で次から次ぎへと付いて来た経験があります。
お客様が、原価簿を見られることは無いと思いますが、それらの内容をみてどう思われるでしょうか?
広告宣伝費も、本社経費・本部経費・共通広告宣伝費そして安全管理費・安全衛生協力会費・コンピューター使用料等、当然現場に負担がきます。
会社を運営するに当たって、色んな経費や維持費が掛かることは避けられません。
でもお客様は、それらの費用が自分の建物の原価に入っているとは認識されていない様に思います。
以前お客様に見積もりの説明をしていて共通仮設の“足場”の負担を「何で俺がせなあかんねん」と言われたことがありました。
「“足場”は、あんたの所で仕事するに当たって必要なだけで俺の都合と違う。俺は要らんで!」と言われたのです。
お客様の立場に立って見えてくる現場の仕事。その建物を合理的に安全に作るための“足場”さえ要らないお施主様からすれば自分の建物のコストに直接原価で無い広告宣伝費や調査研究費や交際費まで付けられているのは、もっと納得できないと思います。
我々は、コストという観点だけでも絞り方を一生勉強、研究して行かなければなりません。
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